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Spring Has Come

Spring Has Come

医師からの言葉~退院

出産後、2,3日経ってからだったか。
皮膚科の先生(同病院内の)が、話があるという。
聞くと、“折れ耳”のことだと。
折れ耳とは、耳の上部が犬の耳のように文字通り折れていること。
聴力に差し支えはないが、気になるようならどこか形成外科に紹介します、と言った。
まあ、確かにこんな耳では将来髪をアップにした時ちょっとかっこ悪いかな。
と、次男も一時通っていた小児医療センターに紹介してもらうよう頼んだ。

その後、産婦人科医のT先生が追って説明をした。

「あとね、ダウン症のような気がするから、そのことも相談してみるといいよ。
 経験上そんな気がするんだけど、(ダウン症の特徴である)手首や足首の関節が柔らかいかって言うと、
 この子はそうでもないんだよねぇ。ま、心配はないと思うけど、一応ね。」

まるで、もののついでであるかのような軽い口調だった。

T先生としては、私になるべくショックを与えないよう配慮してくださったのだと思う。
しかし今思えば、あの時にもっとはっきり言って欲しかった。
いや、それ以前にその場で伊吹から採血をして、早急に検査に回して欲しかった。
そうすれば、医療センターの予約待ち・結果待ちで4ヶ月近くもかかることもなかったと思う。
この時の苦い経験から、三男を妊娠してこの病院にまた通った折、
T先生には「ダウン症の疑いがあったら遠慮なく言って下さいね。私は大丈夫ですから」
と念を押したのだった。
経験者だからこその強気だろうか?

しかし、この時はショックであったのは言うまでもない。
いや、ショックだったが同時に「大丈夫でしょ」と必死で決め付けようとする自分もいた。
・・・先生が心配ないって言ってるぐらいだから。大丈夫でしょ。
だが、再び伊吹の顔を見つめる私は、心から微笑むことが出来なくなっていた。

生まれて保育器に入り間もない伊吹の写真を、私は何枚か撮った。
しかし、夫はそれらを「ブサイクだから」と、ほとんど削除してしまった。
本来なら私も怒るところだろうが、その時は納得してしまった。
それらの写真を見て、「よく見れば確かにダウン症かも」という思いを抱くのが怖かったのかも知れない。
夫も薄々感づいていたのだろう。
T先生に言われてから、夫が面会中にいきなり
「イブちゃん、何だか“ダウン”入ってないか?」と、冗談まじりに私に聞いてきた。
「うん、そう言われた」と私。
「ええ?俺、冗談で言ったんだけど。マジで?」と夫。
私たちはその時、それ以上突っ込んで話題にするのを避けた。
大丈夫だろう、という結論に無理やり達した気がする。
その無駄なあがきは、染色体検査の結果を聞くその日まで続いた。特に夫にとっては。

複雑な思いが錯綜したまま、それでも愛しい伊吹を抱き、念願の我が子と一緒の退院を果たした。
この日のために用意した可愛いツーウェイオールを着せて。
これからずっと一緒だね、イブちゃん。

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